米国港湾サービス料:2025年10月の変更が世界のサプライチェーンに与える影響
海上物流を取り巻く状況が大きく変わろうとしています。2025年10月14日から、米国通商代表部は、米国の港に入港する中国の船主が所有する船舶や中国の運航者が運航する船舶、および中国で建造された船舶を対象に、新たな港湾手数料体系を導入します。手数料は段階的に引き上げられ、2028年に据え置かれる予定です。米国の港湾コスト構造としては、過去数十年で最も大きな変更となります。(2026年10月更新:手数料は2025年10月14日に発効しましたが、USTRは米中間の貿易休戦の一環として、2025年11月10日から1年間、適用を停止しました。)

手数料体系
手数料体系は4つの附属書から成り、重複して課されることはありません。優先順位に従い、船舶の寄港ローテーションごとに1つの附属書だけが適用されます。
附属書I:中国の船舶運航者および所有者
2025年10月14日に純トンあたり50ドルで始まり、2028年4月までに純トンあたり140ドルに引き上げられます。例えば、純トン数65,000の一般的な13,000 TEUのコンテナ船では、現行料率で寄港ローテーションあたり325万ドルの手数料が発生します。満載時にはTEUあたり約250ドルです。2028年には、同じ船舶の負担が寄港ローテーションあたり910万ドルになります。
附属書II:中国で建造された船舶
純トンあたり18ドルまたはコンテナあたり120ドルのいずれか高い額が適用され、2028年までに純トンあたり33ドルまたはコンテナあたり250ドルに引き上げられます。重要なのは、個々の入港ごとではなく、寄港ローテーション(米国の港への一連の寄港)ごとに課される点です。課金対象は船舶1隻につき年間最大5回の寄港ローテーションです。
附属書III:外国で建造された自動車運搬船
2025年4月の告示では、米国以外で建造された自動車運搬船に対し、乗用車換算単位(CEU)あたり150ドルが課されることになっていましたが、USTRは2025年10月に、2025年10月14日付で純トンあたり46ドルに変更しました。
附属書IV:LNG船
液化天然ガス輸送には別途要件が設けられています。
政策の背景
この手数料の根拠は、2024年4月に開始された301条調査です。この調査では、海運分野における中国の行為、政策、慣行は「不合理であり、米国の商取引に負担を課すか、制限している」と結論付けられました。掲げられた目的は明確です。海運における中国の優位を覆し、米国のサプライチェーンの脆弱性に対処し、米国で建造される船舶への需要を喚起することです。
政策がどう変わってきたかも重要です。2025年2月の当初案では、中国企業が運航する船舶に入港1回あたり最大100万ドル、中国で建造された船舶に150万ドルの手数料を課すとしていました。3月の公聴会で300以上の業界団体から意見が寄せられた後、USTRは現在導入が進むトン数・コンテナ数に基づく体系に転換しました。当初の方式は経済的に成り立たないと認めた形です。
業界の反応
海運業界は10月を待たずに動いています。CFOのXavier Destriau氏によると運航船舶のトン数の「半分弱」が中国建造船であるイスラエルの船会社Zimは、すでに手数料の負担を最小限に抑えるため、航路間で船舶の配備を見直しています。Okeanis Eco Tankersも先手を打ち、3隻のVLCCの購入オプションを行使して、中国のセール・アンド・リースバックの資金提供者から買い取り、ギリシャの銀行で借り換えを行いました。
Ocean Allianceは、特に複雑な配船の最適化に直面しています。主要メンバーであり中国の船舶運航者でもあるCOSCOは、附属書Iの大きな影響を受けます。同アライアンスは通常、CMA CGMとEvergreenの船舶を米国航路に配備し、COSCOとOOCLの船舶を他の航路に使います。しかし、CMA CGMの新造船発注残の35%以上がChina State Shipbuilding Corporationの造船所にあることを考えると、この戦略はより複雑になります。
契約上の影響
手数料は、契約面でも大きな不確実性を生みます。英国法に基づく一般的な定期傭船契約では、港湾関連費用は傭船者が負担します。BIMCOは、船主に船舶情報の開示を求め、原則として傭船者にUSTR手数料の負担を割り当てる標準条項を公表しました。ただし、手数料によって傭船の経済的負担が重くなる場合、ハードシップ条項やフラストレーションの法理(契約目的の達成不能)に基づいて救済が可能かという問題が生じます。
課金が年間5回の寄港ローテーションまでに限られる点も、問題を複雑にします。手数料は1隻あたり年間最大5回の寄港ローテーションにのみ課されるため、1隻の手数料負担は米国へ向かう航海の一部に集中します。そのため、船会社はすべての航海にコストを配分し、個々の航海に手数料が発生するかどうかにかかわらず、運賃や付帯料金を通じて顧客へ追加料金を転嫁する可能性が高いと考えられます。
より広い政策の動き
Center for Strategic and International StudiesによるS&P Globalデータの分析によると、中国の造船所は2025年の最初の8か月間に、トン数ベースで世界の船舶受注の53%を獲得しました。USTRの手数料は、より広範な政策の枠組みの一部です。この枠組みには、中国製のコンテナ、シャシー、岸壁クレーンへの関税案に加え、米国籍船への優先的な貨物割り当てを段階的に求める、再提出されたSHIPS for America Actも含まれます。
これらの政策は、継続的な金銭的圧力によって世界の新造船発注を中国の造船所から韓国、日本、そして最終的には米国の造船会社へ移せるという見込みに基づいています。掲げられた目的を達成するのか、それともサプライチェーン全体のコストを押し上げるだけなのかは、今後数年で明らかになるでしょう。
荷主と輸入者への影響
米国向けに出荷する企業には、いくつかの検討事項があります。
手数料は海上運賃に影響しますが、コンテナあたりの負担は積載率や航路によって大きく変わります。満載の13,000 TEUの船舶では、現行料率でTEUあたり約250ドルの手数料が発生します。一般的なコンテナ貨物の価値を考えれば、無視できないものの、輸送が成り立たなくなるほどの負担ではありません。
より大きいのは、戦略面の不確実性です。船会社は積極的に航路や船隊の配備を再編しています。2024年に機能していた運航サービスが、2025年第4四半期には大きく変わっている可能性があります。サプライチェーンの担当チームは、想定されるサービス変更について今から船会社と協議し、各航路にどの船舶が配備されているかを把握し、契約の費用転嫁条項を見直すべきです。
物流の専門家は、こうした変動に対処する方法の1つとして、指数連動型の契約を推奨するようになっています。調達チームが、市場の混乱のたびに運賃を再交渉するのではなく、実際の輸送業務の遂行に集中できるようにするためです。
今後の見通し
法的な異議申し立てや行政上の遅延がない限り、10月14日の実施日は確定しています。米国税関・国境警備局が手数料を徴収し、今後数か月以内に詳細な実施指針が示される見込みです。年間5回の寄港ローテーションの上限が暦年単位なのか、それとも連続する12か月単位なのかなど、いくつかの制度上の細部は未解決です。
明らかなのは、2025年後半以降の海上物流環境が、それ以前とは根本的に変わるということです。米国への輸入に大きく依存する企業は、今から複数のシナリオを試算し、利用する船会社が新たな手数料体系からどの程度の影響を受けるかを把握し、サプライチェーン戦略に柔軟性を持たせるべきです。
港湾手数料は、単なるコスト増以上の意味を持ちます。貿易政策の優先順位が変わり、海上物流が単なる日々の業務ではなく、戦略上の検討事項として認識されるようになっていることを示しています。
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